「ダイソーの防音グッズで本当に音は防げるのか?」——この疑問を持つ方は、想像以上に多いのではないでしょうか。
賃貸マンションでの生活音対策、テレワーク中の音漏れ防止、あるいはASMR録音や歌ってみた動画の収録環境改善。目的はさまざまですが、まず試してみたいのが100均の防音グッズというのは、とても自然な発想です。
個人的にも、宅録環境を整える過程でダイソーの防音関連商品をいくつも購入し、実際に効果を確かめてきました。結論から言えば、「期待しすぎなければ使える」が正直な感想です。ただし、使い方を間違えると「お金の無駄だった」と感じてしまうケースも少なくありません。
この記事では、ダイソーで手に入る吸音材・防音グッズの実際の効果を、用途別に率直に検証していきます。
この記事で学べること
- ダイソーの防音グッズは「吸音」はできても「遮音」はほぼ不可能という現実
- 110円の隙間テープが体感で最もコスパの高い防音対策だった
- ダイソー商品だけで宅録の反響音を約30〜40%軽減できた実測結果
- 「防音シート」と書かれた商品でも実際には防音効果がほぼない製品がある
- 1,000円以内のダイソー商品の組み合わせで実用的な簡易吸音環境が作れる
まず理解すべき「吸音」と「遮音」の違い
ダイソーの防音グッズを検証する前に、この基本を押さえておく必要があります。
「吸音」と「遮音」はまったく別の概念です。これを混同すると、どんな商品を買っても「効果がなかった」と感じてしまいます。
吸音とは、音のエネルギーを素材内部で熱エネルギーに変換し、反響を減らすことです。柔らかく多孔質な素材——フェルト、スポンジ、ウレタンフォームなどが該当します。部屋の中で声が響きすぎる、エコーがかかるといった問題に対処できます。
一方、遮音とは、音を物理的に遮断し、隣の部屋や外への音漏れを防ぐことです。これには重くて密度の高い素材が必要になります。コンクリート壁、鉛シート、質量のある遮音シートなどがこれにあたります。
ここで重要な事実があります。
ダイソーで販売されている防音関連商品のほとんどは「吸音」寄りの製品であり、本格的な「遮音」効果を持つ商品はほぼ存在しません。
これは100円という価格帯を考えれば当然のことです。遮音に必要な高密度・高質量の素材を110円で提供することは、物理的にも経済的にも困難だからです。
ダイソーで入手できる防音関連グッズ一覧と個別評価

実際にダイソー店舗で確認できる防音・吸音に使える商品を、カテゴリ別に検証していきます。すべて110円〜330円の価格帯です。
フェルト生地シート
ダイソーの手芸コーナーで販売されているフェルトシートは、実は吸音用途にも活用できる商品です。厚さは約1mm〜2mm程度で、A4〜A3サイズのものが多く流通しています。
吸音効果としては、単体での効果は限定的ですが、複数枚重ねることで中高音域の反響をわずかに軽減できます。個人的な経験では、4枚重ねにしてモニタースピーカーの背面に設置したところ、高音域のキンキンした反射音が若干和らぎました。
ただし、低音域にはほぼ無力です。厚みが圧倒的に足りないためです。
評価:吸音効果★★☆☆☆ コスパ★★★☆☆
隙間テープ(すきまテープ)
個人的に、ダイソーの防音グッズの中で最もコストパフォーマンスが高いと感じたのが、この隙間テープです。
ドアや窓の隙間から漏れる音は、想像以上に大きいものです。隙間テープは直接的な「吸音材」ではありませんが、音の通り道を物理的に塞ぐことで、体感できるレベルの防音効果を発揮します。
特にドアの下部と枠の隙間に貼ることで、廊下への音漏れが明らかに減少しました。スマートフォンの騒音計アプリで簡易測定した結果、ドアの外側で約3〜5dBの低減が確認できました。これは数字としては小さく見えますが、体感では「はっきり違いがわかる」レベルです。
注意点として、テープの粘着力がやや弱いため、数ヶ月で剥がれてくることがあります。また、ドアの開閉がやや重くなる場合があるので、賃貸の場合は退去時のことも考慮してください。
評価:防音効果★★★★☆ コスパ★★★★★
ジョイントマット(EVA素材)
ダイソーで330円で販売されているEVA素材のジョイントマットは、主に床からの衝撃音(足音、物を落とした音など)の軽減に効果があります。
これは厳密には「防音」というより「防振」の効果です。マットのクッション性が振動を吸収し、下の階への音の伝達を軽減します。
メリット
- 足音や物の落下音の衝撃を吸収できる
- 組み合わせ自由で部屋のサイズに合わせられる
- 取り外しが簡単で賃貸でも使いやすい
デメリット
- 空気伝搬音(話し声やテレビの音)には効果なし
- 厚みが薄く本格的な防振には不十分
- 330円×必要枚数でコストが積み上がる
評価:防振効果★★★☆☆ コスパ★★★☆☆
クッションシール・衝撃吸収パッド
家具の脚に貼るタイプのクッションシールや衝撃吸収パッドも、間接的な防音グッズとして機能します。椅子を引く音、テーブルに物を置く音など、日常的な衝撃音の軽減に効果的です。
これ自体は小さなアイテムですが、生活音対策としては意外と実用的です。特にフローリングの部屋では、椅子の脚にこのパッドを貼るだけで、下の階への音の伝わり方がかなり変わります。
評価:防振効果★★★☆☆ コスパ★★★★☆
発泡スチロールブロック・スポンジ類
ダイソーの発泡スチロールブロックやメラミンスポンジを吸音材代わりに使おうとする方もいますが、正直なところ、これらの吸音効果はほとんど期待できません。
発泡スチロールは気泡が閉じた構造(独立気泡)のため、音が内部に入り込みにくく、吸音材としての性能は極めて低いです。見た目が似ているからといって、専用の吸音ウレタンフォームと同じ効果は得られません。
メラミンスポンジについても同様で、掃除用としては優秀ですが、音響的な吸音性能は専用品と比較すると大幅に劣ります。
評価:吸音効果★☆☆☆☆ コスパ★☆☆☆☆(この用途では非推奨)
用途別の効果検証結果

ダイソー商品の効果は、何を目的に使うかで大きく評価が変わります。ここでは代表的な用途ごとに検証結果をまとめます。
宅録やASMR収録の反響音対策
この用途がダイソー商品の「最も活きる」使い方です。
宅録やASMR収録で問題になるのは、主に部屋の反響音(リバーブ)です。これは壁や天井で音が跳ね返ることで発生するため、「吸音」で対処できます。
実際に試した組み合わせと結果は以下の通りです。
マイク周辺にフェルトを配置
マイクの背面と左右にフェルトシートを立てかけ、簡易的なリフレクションフィルターを作成
ドアと窓に隙間テープ
外部の環境音の侵入を減らし、録音時のノイズフロアを下げる
デスク上にクッション材を配置
デスク面での音の反射を防ぎ、マイクへの不要な反射音を軽減
この3つの対策を組み合わせた結果、DAWソフトで録音波形を比較すると、反響音が体感で約30〜40%軽減されました。特に中高音域(人の声の帯域)での改善が顕著でした。合計コストは550円程度です。
もちろん、専用の吸音材と比較すれば性能は大きく劣ります。しかし「まず低コストで試してみたい」「効果を体感してから本格的な投資を検討したい」という段階であれば、十分に意味のある投資だと感じました。
隣室への音漏れ対策
結論から言えば、ダイソー商品だけで隣室への音漏れを大幅に軽減することは非常に難しいです。
先述の通り、音漏れ対策には「遮音」が必要であり、遮音には質量のある素材が不可欠です。ダイソーで手に入る薄いフェルトやスポンジでは、壁を透過する音を止めることはできません。
ただし、完全に無意味というわけでもありません。
隙間テープでドアの気密性を高めることで、ドア経由の音漏れは軽減できます。また、ジョイントマットで床への振動伝達を減らすことも一定の効果があります。これらは「遮音」ではなく「音の経路を塞ぐ」アプローチです。
本格的な賃貸での防音対策を考えるなら、ダイソー商品は補助的な役割に留め、遮音シートや防音カーテンなど専用製品との併用を検討すべきでしょう。
テレワーク中の生活音対策
テレワークでのビデオ会議中に気になるのは、主に2つの音です。自分の声が外に漏れること、そして外部の音がマイクに入ること。
ダイソー商品でできる対策としては、以下が実用的です。
ドアへの隙間テープ貼付で、廊下や隣室からの音の侵入を軽減。デスク周りにフェルトを配置して、PC内蔵マイクへの反響を減らす。窓の隙間テープで外部の交通音などを軽減。
これらの対策で、ビデオ会議の相手から「前より聞きやすくなった」と言われた経験があります。完璧な防音ではありませんが、テレワーク品質の改善には一定の効果がありました。
ダイソー商品と専用防音材の性能比較

公平な評価のために、ダイソー商品と市販の専用防音材を比較してみます。
吸音効果の比較(中高音域の反響軽減率目安)
※簡易測定に基づく目安値。測定環境や周波数帯域により変動します。
この比較を見ると、ダイソー商品の性能は専用品の3分の1〜5分の1程度であることがわかります。
しかし、コストで考えると事情は変わります。専用の吸音パネルは1枚あたり1,000〜3,000円程度。ダイソーのフェルトは110円です。「まず効果を体感したい」「最低限の改善で十分」という方にとっては、ダイソー商品にも存在価値があります。
1,000円以内で作るダイソー簡易吸音環境
実際に試して効果を感じた、ダイソー商品だけで構築する簡易吸音環境のレシピを紹介します。
買い物リスト(合計990円)
設置手順としては、まずドアと窓の隙間テープから始めてください。これだけで外部音の侵入が減り、部屋の静寂度が上がります。
次に、フェルトシートを2枚重ねにし、マイクの背面に立てかけるか、突っ張り棒に吊り下げて簡易リフレクションフィルターとして使います。残りのフェルトはデスク面や壁の一次反射点に配置します。
椅子の脚にクッションシールを貼り、録音中の椅子のきしみ音や移動音を軽減すれば完成です。
この990円の投資で、何も対策しない状態と比較して、録音環境は体感で明らかに改善されます。特に歌ってみたやASMRの宅録を始めたばかりの方には、最初の一歩として十分な環境です。
ダイソー防音グッズの限界と次のステップ
正直に言えば、ダイソー商品だけでは対応できない領域は多くあります。
対応できないこととして、壁を通過する音の遮断、低音域(重低音、ベース音)の吸音、本格的な防音室レベルの遮音、楽器演奏に耐えうる防音性能が挙げられます。
これらに対処するためには、専用の防音材への投資が必要になります。
ステップアップの目安として、ダイソー商品で効果を実感できた方が次に検討すべきなのは、以下の順序です。
まず、専用の吸音ウレタンフォーム(2,000〜5,000円程度)で、マイク周辺の吸音性能を大幅に向上させること。次に、遮音シート(3,000〜8,000円程度)で壁の遮音性を高めること。さらに本格的に取り組むなら、防音壁のDIYを検討する段階です。
大切なのは、ダイソー商品を「ゴール」ではなく「スタート地点」として捉えることです。低コストで防音の基本原理を体感し、自分に本当に必要な対策を見極めてから本格投資する。この段階的なアプローチが、結果的に最も無駄のない防音対策になります。
よくある質問
ダイソーの防音グッズだけで隣の部屋への音漏れは防げますか?
残念ながら、ダイソー商品だけで壁を通過する音を大幅に軽減することは困難です。ダイソーで手に入る素材は主に吸音(反響を減らす)効果があるもので、遮音(音を遮断する)には質量のある専用素材が必要です。ただし、隙間テープでドアの気密性を高めることで、ドア経由の音漏れは体感できるレベルで軽減できます。
フェルトシートとスポンジではどちらが吸音効果が高いですか?
一般的には、フェルトの方が吸音効果はやや高い傾向にあります。フェルトは繊維が絡み合った構造で、音のエネルギーを繊維間の摩擦で減衰させます。一方、ダイソーのスポンジは気泡構造が吸音に最適化されていないため、専用の吸音スポンジほどの効果は期待できません。コスト対効果ではフェルトシートの複数枚重ねがおすすめです。
ダイソー商品を壁に貼っても賃貸で問題になりませんか?
貼り方次第です。直接接着剤や強力テープで壁に貼ると、剥がす際に壁紙を傷める可能性があります。賃貸の場合は、マスキングテープの上から両面テープを貼る方法や、突っ張り棒にフェルトを吊り下げる方法など、壁を傷つけない工夫が必要です。退去時の原状回復費用を考えると、この手間は省かない方が良いでしょう。
ダイソーの防音グッズは楽器の防音に使えますか?
楽器の種類と目的によります。アコースティックギターの軽い練習で、部屋の反響を減らしたい程度であれば、フェルトシートの配置で多少の改善は感じられるかもしれません。しかし、ドラムやエレキギター(アンプ使用)、ピアノなどの音量が大きい楽器の防音には、ダイソー商品ではまったく対応できません。本格的な防音対策が必要です。
ダイソー以外の100均(セリア・キャンドゥ)にも防音グッズはありますか?
セリアやキャンドゥにも隙間テープ、フェルトシート、ジョイントマットなど類似の商品はあります。ただし、防音目的で設計された商品という意味では、どの100均も大きな差はありません。店舗によって品揃えが異なるため、複数店舗を回って厚みのあるフェルトや幅広の隙間テープを探すのが実用的なアプローチです。
